音楽と形式と

音楽について好き勝手語ったり解説したり

感情の動的なもの ~ルロイ・アンダーソン『Forgotten Dreams』に見る~

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とある音楽美学者は音楽は特定の感情を表現しないとした。それは音楽とは無対象芸術であり、それ自体が目的であるという主張だ。

しかしその一方で「感情の動的なもの」は表現されるとした。
具体的な感情は表現できないが、あくまでそのモーメントは表現可能なので、感情美説信者はこの効果で音楽が具体的な感情を表現できると勘違いしているのだと批判する。
要は、とある人への「好意」は表現できないが、その好意の中に含まれる「感情の上下」は表現できるようなものだ。

長らくこれはこの美学者の妥協ポイントの一つであると私は考えていた。頭ごなしに敵対勢力を否定するより、一部は認めて「だがしかし~」としたほうが賢い場合がある。

だが今、この曲がその認識を変えつつある。この単純なピアノの旋律と和声の伸縮は、なんだかわからないが確かに感情をどこかへ引っ張る気がする。でもどこか具体的な場所へ連れていくわけではない。

 

音楽は不思議だ。