音楽と形式と

音楽について好き勝手語ったり解説したり

「ピアノを弾けますか?」

「ピアノを弾けますか?」という質問を人生で何度も言われたことがあります。一番多いシチュエーションは学生時代の音楽の授業中です。僕は楽譜が読めたので、メロディとコードが載っているページの曲であれば、それっぽいリズムを即興でつけて適当にそれっぽく弾けました。

ここで必要な力は大きく四つあって、①楽譜を読む力、②コードネームを読む力、③適当にビートを考える力、④それらに該当する鍵盤を指で押すことのできる能力。これがあったから”それっぽく”弾けたわけです。
コードネームしか書いていないということは、リズムは自由に変えてもいいし、メロディを弾かずに右手でコードを押さえながら左手でベースラインを弾いてみてもいい。もちろん自分のできる幅でね。

まぁとにかくこういう一種の遊びが好きで、よく授業中のフリーな時間にやっていたんですが、上記のようなトラウマな質問を無邪気に投げかけられることが多かったです。

そもそも僕はエレクトーンの人間でした。だから「うん、弾けるよ」と言うと次の瞬間に「じゃあこれも弾いてみてよ」とガチガチのピアノの譜面を出されるとお手上げなわけです。

というか①~④というのは、あくまで脳内で考えたことを実行しているので、楽譜に書いてあることを実行しているわけではないのです。
例えるならレゴブロックでお城を作るのと、○○城制作キッドで説明書通りに作るのとはわけが違うわけです。説明書というシロモノが読めない子供だって、レゴブロックとか積み木でお城を作ることはできるかもしれないでしょう。

とにかく、ピアノの譜面を持ってこられた僕はもちろん弾くことなんてできず、「なんだホラ吹きか」となったわけです。

それでも学校のピアノを適当に弾くことは好きだったので、対策を考えざるを得ませんでした。そして考え出したのが「楽譜は読めるよ」と返すこと。

Q.ピアノ弾けるの?
A.楽譜は読めるよ。
→ここで会話が終わればOK

Q.つまりピアノを弾けるってこと?
A.こういう楽譜(メロディとコード進行だけが載っている楽譜)だったら弾けるよ
→ここで会話が終わればOK

Q.ていうことはピアノを弾けるってこと?
A.うーん、弾けないかなー(ほっといてくれよ)。
→めんどくさいから、もういいよ

答えになっているようでなっていない問答を繰り返して相手に匙を投げて、もしピアノの譜面を持ってきたら、「これは読めない種類の楽譜だね」と言って引き下がります。

そういえば、嫌いなピアノの先生には「あなたのフォルテはピアノ」と言われるくらいタッチがクソ雑魚だったこともあるし、やっぱりピアノは弾けないというのが正しい答えかもしれません。

「ピアノが弾ける」とはどこからがそのラインなのでしょうね。