音楽と形式と

音楽について好き勝手語ったり解説したり

Cで始まってDで終わってみる実験

アナリーゼの休憩中にふと自分でも軽く音楽を作りたくなって、ふとこんなことをやってみた。
「C-durで初めてDで終止してみよう」
なんとなく、関係調でもない単に一つ上の調への転調は意外と難しいのかなーと思いつつ、適当にコード進行を作ってみる。

※音量注意

 

やってみての感想は3つ。

 ①ドミナントモーションって説得力あるなー
 ②dim7のオールマイティ感
 ③4和声の方が即興性は優れる


大前提として、僕は作曲については専門の教育を受けておらず、和声学の知識はもっぱらルートヴィヒ・トゥイレの『和声学』を読んだ程度である。もし上記の和声進行がいい感じに聴こえるなら、50年以上前の作曲技法は現代でも十分実用レベルにあるということになるだろう。

①についてはざっくり言うと完全4度への進行はそれなりに説得力があるということだ。これが顕著に表れるのはもちろんV→Iの進行であり、20~21小節と24~25小節の進行が自然なのはこれの力なのかもしれない。

②はdim7の自由度の高さについてである。
dim7はそれぞれの構成する4つの音の音程が等しい。例えばAdim7はA/C/Es/Gesで構成されるが、それぞれの音の間隔が等しいので、どう展開してもそれぞれの根音をコードネームにしたdim7になる(Adim7=Cdim7=E♭dim7=G♭dim7)。
これは裏を返すと譜面上はAdim7であってもそれは同時にC=dim7等の振る舞いもできるということになる。
今回は上記の性質を利用して、17小節以降で調性を散らすように配置してみた。
また、dim7はV(7)への進行もスムーズにできるので、ベートーヴェン大先生のようにドッペルドミナント的な用法にかなり重宝する。21小節以降のEdim7→G→AはもともとEdim7→G→Cで考えていたのをCからみたVIの代理可能なAに変更した経緯がある。
17~24小節はそれまでしつこく提示されたC-durの調性を散らしてぼやかして、わけわからなくして、最後のA→Dのドミナントモーションで無理やりDへの落ち着きを演出するように心がけた。

③はジャズの即興性に通じるところがある。
クラシック音楽とジャズでは和声の捉え方がまったく異なる。詳しくはこちらの記事が詳しくわかりやすいです。
端的に言うと、クラシック界隈の場合は3声ベースでの解釈が一般的だが、ジャズの場合は4声ベースでの発想が基本ということだ。
クラシック界隈ではアナリーゼの際に、dimとdim7は区別する必要があるが、解釈よりも実践に重きを置くジャズではよりその場で工夫しやすい4声での考え方が基本であるためdimとdim7は区別しない(する必要がない)ということである。
実際に17小節以降はそれまでの3声から4声へパート数を増やしていて、この方が音を動かしやすかったのは事実だ。
今回は、これを実感できたのが一番大きかった。



この実験を通じて、やはり転調の仕方というのにはその人の個性が現れるなーと実感した。自分にはメロディを作るほどの才能はないが、アナリーゼに行き詰まった場合はその作曲家になったつもりで何か作ってみるのも一つの手だろうなと思う。