音楽と形式と

音楽について好き勝手語ったり解説したり

新世界の先に

今週のお題「夢」から

 

 

校舎の屋上から沈んでいく夕陽を見る。

この愛好会で何をしようか。「コンクール」にもとらわれることなく、好きなことを好きなように、僕らのやりたいことを、やりたいようにやるんだ。人間関係の悩みも、僕ら二人なら関係ない。

 

君はトランペットで、僕はテューバだ。いや違う。君はトランペットであり、コルネットであり、ピッコロトランペットで。僕はテューバであり、ユーフォニアムであり、トロンボーンだ。
今や一つの楽器にとらわれることはない。一つの曲の中で、自由に持ち替えて好きな音色で好きに奏でよう。
バックのハーモニーとして、足踏み式の鍵盤ハーモニカなんかもいいかもしれないね。テープで鍵盤を押さえてさ、チューブの先を空気入れにつなぐんだ。

 

吹奏楽なんていう和風な響きを僕らは求めない。フィリップジョーンズブラスアンサンブルのようなエンタメと輝かしいメタリックな音色で、自由に。

 

僕らの三年間を自由な音楽に捧げよう。

 

僕らだけの編成。僕らのための楽譜。
『新世界』の4楽章、酸欠になるまでエンドレスで校内に響かせるんだ。理由なんてない。目的もない。自然と目が合えば時間なんて気にせずもう一周。
たった2本のラインで作る音楽は、情報不足と言われようと、最小限の描写だけで十分わかるさ。音楽の美しさなんてものはさ。僕らにはわかるさ。


いつか文化祭で僕らは最大限の輝きを音楽に付ける。人々が不可能と思っているラインがいかに低くお粗末であるかを知らしめる。わざとらしいブラボーは要らない。

さぁ、もう少しでその時だ。緊張するけど。練習に費やした時間が僕らを助けてくれるから、きっと大丈夫。

 

今、照明のライトがゆっくりと昇り二つのベルに反射する。

新世界のその先へ、僕らは行くんだ。

 

 

いつもここで終わってしまう。その先の景色を、僕らは見れなかったから。