みなさん、こんにちは
今回はベートーヴェンの交響曲第2番1楽章を解説していきます*1。
※この記事は投稿した下記動画のテキスト版です。
よろしければ元動画もご視聴いただければ幸いです。
まずは全体像から
まずは全体像から解説していきます。
この動画では一楽章はソナタ形式であるという前提に基づき、このように捉えています
ちなみにこれを円グラフにするとこうなります。
美しい比率ですよね。これがベートーヴェンのシンフォニーの中でも形式美の要素が強いと言われる所以のひとつだと思います。
提示部
この2番はこの2つメロディをもとに作られています。前者が所謂第一主題、後者が第二主題と言われるものですね。
第一主題は主調のD-durで提示されるのに対し、第二主題は属調のA-durで提示されます。
実際には、これらが提示される前には6つ振りのゆっくりとした3拍子の序奏がついており、またその間には経過句が挟まれます。
さらに第二主題提示後には展開部を前にコデッタがあり、ここでは第一主題がメインのパーツになっています。
展開部
展開部では第一主題と第二主題が順番に展開されます。
まずは第一主題がD-mollに転調されます。
次にG-mollに転調し、さらにメロディの一部が変形されます。
この後さらにC-durへ転調すると16分音符のターンのような音型がより重要性を増していきます。
またこの裏での和声進行も見てみましょう。
Em→Edim7→A7→Dmの流れを見てください。
いったんDmをゴール地点と見立てると、属和音であるA7を導くためにEdim7をドッペルドミナント的に用いているのがわかります。
そして同様にDm→Ddim→G7という流れもDdimがG7を導く役割をしています。
dimコードは一音変えるだけで属和音へ移行できる便利な和音ですが、ここではそれがお手本のように使われていますね。
↓Edim7→A7→D
↓Adim7→D7→G
ここから怒涛のD7の連打が繰り返され、一時的な再現部が現れますが、雰囲気からまったくそれとはわからなくなっています。
もちろんこのD7が導くのは、これを属7に持つG-durの第二主題です。
この第二主題がFis-mollに転調するとこのような形に変形されます。
雰囲気はまったく異なるものの、これは第二主題の頭のこの音型を変形したもので、音程で言えば、1つ目の2分音符から見た16分音符と符点2分音符の音程は維持されつつ、2番目の複付点音符の音程が完全4度へ変更されています。
さらにこの後、2ndバイオリンによってC#、F#mが交互に繰り替えされますが、ここでは、この上に乗る1stバイオリンのリズムに注目してみましょう。
このリズムは実は以前、提示部で第一主題の後ろに付いて経過句を導いていましたが、展開部では第二主題の後ろについて次の再現部を導くような役割に配置転換されています。
再現部
それぞれが順番に展開された後に再現部が現れますが、これも提示部同様に第一主題と第二主題が順番に再現されます。
第一主題に続く経過句、第二主題はそれぞれD-durで再現され型通りと言った感じですが、第一主題から経過句へのつなぎは、先ほどの配置転換されたものを戻すのではなく、新たな要素で工夫されています。
また、コデッタに関しては提示部ではA-durで始まり、D-durで締められていたのに対して、再現部では流れに乗ってD-durで始まりG-durで終わるよう変更されています。
Coda
さらにCodaでも主題は展開され続けています。
まず、ここの音程から見ていくと、第一主題の変形となっているのがわかります。
さらにこの後半の8分音のくだりはD→E*2→A7の分散和音となっており、これは提示部での和声進行に由来していると考えられます。
リズムの面でもこの符点8分音符は第二主題がFis-mollに展開された時のものを流用しており、最後には鋭いリズムとDの音で1楽章は締めくくられます。
解説終了!
ざっくりとした内容ですが、以上で解説は終了です。9つあるベートーヴェンのシンフォニーの中では地味で目立たない存在の2番ですが、ぜひこれを機にベートーヴェンの2番を聴いてみようと思う方が一人でも増えれば幸いです。
個人的には5番の1楽章よりはよっぽどテンプレのソナタ形式なので、教科書にはこちらを載せたほうがわかりやすいと思っています。
▼おすすめの録音は下記よりどうぞ!
George Szell@The Cleveland Orchestra
Nikolaus Harnoncourt@Chamber Orchestra of Europe
Frans Brüggen@Orchestra of the 18th Century
*1:スコアはIMSLPより見ることができます!
▼IMSLP
https://imslp.org/wiki/Symphony_No.2,_Op.36_(Beethoven,_Ludwig_van)
※パブリックドメインに注意して利用してください。
*2:提示部ではE7